●十番高校 「デマンド先生ぇ〜!」

 どういった運命のイタズラだろうか。この場にいるセーラー戦士全員(プラス、教師一名)が頭を抱えた。

 高校2年に進級し、仲良しメンバーは何故か同じクラスにおさまっていた。話題のアイドル3人組も同じである。
 放っておいても何かしら話題の集まるメンバーなので、いっそ同じにしてしまえと思ったのかもしれない。知られざる教師側の苦悩である。犠牲者は一人でいい。
 そのスケープゴートにされた気弱な担任教師は、早速問題に直面していた。
「え、えー‥‥月野はこの人と知り合いか?」
 ある人物が教室内に入ってきたことで天にも轟く大絶叫を上げたうさぎに、担任教師は至極最もなことを聞いた。
 恋人である星野他メンバーの痛いほどの視線を感じ、クラスメイトになった仲間達に視線を送る。
 ──亜美ちゃんっ、まこちゃんっ、美奈子ちゃぁぁぁんっ!!! 何でこんなことになってんのぉぉお!?
 必死の視線にも、亜美、まこ、美奈子には答えられない。自分達の知らない未知の力が働いた現象だとしか思えないからだ。
 嘘としか思えない現象、もとい、“彼”は口をきいた。
「運命の再会だ‥‥クイーン・セレニティ」
「で、デマンド‥‥」

 男の不穏な台詞と。それに応じた形で応えたうさぎの台詞に。現・恋人星野くんは。
「だっ、誰だコイツーーー!!!???」
 叫んだ。

 ここは21世紀の地球だ、日本だ、平成だ。
 それなのに、ありえないプリンスが普通にドアを開けて普通に入って来た。
 その彼は、星野に『何だコイツ』という視線を送り、多くの生徒や教師を無視し、うさぎの座る席まで足を運ぶ。
「会いたかったぞ、クイーン」
「でっ、でででデマンド、何でここにー!?」
 衆人環視の見守る中、クイーン・セレニティだなどと幾度も言われてはかなわない。ここでは月野うさぎというれっきとした日本名があるのだから。
 うさぎに問われ、デマンドは。
「どうしてだろうな‥‥お前に会いたくて、運命をもねじ伏せてしまったのかもしれない」
 ギャラリーがどよっとどよめいた。
 客観的に見て、敵であっても美しい。何せプリンスである。外見がごーじゃすなんである。
「‥‥きっざー」
 夜天がぼそりと呟いた。美奈子も隣でこくこくと頷いている。
「お前、誰だよっ!?」
 うさぎの後ろに座っていた星野が、目をギラつかせて吼える。
 デマンドが眉をひそめ、更に『何だうるさいな』という目で見る。
「うさぎに変なこと言うんじゃねぇ!」
 威嚇すると、プリンス・デマンドが言った。
「この女はオレのものだ」
 爆弾投下。
 担任はもうこの職業嫌だと思った。

「はーっ、驚いたねうさぎちゃん! まさかデマンドまで転生してくるなんて」
「アイツ、一体どういうつもりなんだろ、高校に教師として来るなんて」
 興奮気味の美奈子と、不審げなまこと。亜美は会話に加わらず、眼鏡を押し上げて考え込んでいる。
「以前戦った敵にしては、随分とご執心のようだったけどー?」
 夜天が美奈子の傍らで声を上げた。
「そうですね、敵対心があったようには見えませんでしたが‥‥」
 大気も黙る亜美の傍らで首を傾げている。
 星野はうさぎを問い詰めていた。
「アイツと何があった!?」
「べ、別に何も‥‥」
 と言葉を濁しつつ、視線をそらす。とことん嘘をつけない馬鹿正直な性格なんである。
 ──口が裂けてもっ! 言えない! 過去捕まえられて着替えさせられてキスされただなんてっ! 言えない! 絶対言えないー!!

「フフ‥‥」
 担任教師の後ろに続いて押し殺した笑いを上げる怪しいプリンス。
 ──運命の出会いだ。日頃の行いが良いからだな‥‥。
 まるで日本人のようなことを考えるプリンス・デマンド。彼は日本人どころか地球人ですらない。
「運命だ‥‥」
 噛み締めるように呟いた感動の台詞は、ただの気の弱い担任にとって戦慄ものでしかなかった。

「では、授業を始める」
 女子生徒は夢見る乙女の視線を教壇に向かって投げているが、セーラー戦士の目には不気味にしか映らない。
 あの、プリンス・デマンドが。ムーン・キャッスルを破壊し尽くさんとしていた傲慢なブラック・ムーンのプリンスが。
 ──授業を始める、だとぉぉおっ!?
 何の授業だ、一体! と内心激しくツッコんでいると、テキストを開き一言。
「今日は大伴家持の歌について言及する」

 古典かいっっっ!!!???

 セーラー戦士、兼、現役女子高生ズは思いっきり、ズッこけた。
 
 どうしてなんだろう、何故なんだろう。
 あなたは日本人でなく、いいえ地球人でもない。しかも転生してきたのだとしても、その瞳と御髪(おぐし)は非日本人。
 どこで日本文学に傾倒したのですか‥‥?
 セーラー戦士たちに多大な疑問を残しつつ、プリンス・デマンド、もとい、デマンド先生(おえっ)の記念すべき初授業は滞りなく進められていた。
 コイツ何で日本語知ってんの? てな疑問はともかく、どうやら日本の歴史は遥か昔、縄文時代や弥生時代についても学んでいるようだった。
「これは授業には関係ないが、縄文人というのは実は栗林を作り、食料の備えにしていた。一般常識では今とは程遠い遅れた生活を営んでいると思われがちだが、実はそうではないということを覚えておきなさい。若いうちは流行や西欧文化に流されがちだが、自分の国のことぐらいは最低限学んでいなければならない」
 と生徒に説教までする始末。
 本当はあんた一体いくつなんだよと小さい呟きが聞こえる中、授業終了のチャイムが鳴った。
「では、今日はここまでにする。こらそこ、まだ片付けるんじゃない。‥‥よし、それでいい。一応君達の学力を調べるために、このプリントを宿題にしておく。なに、中学で普通に授業を受けていれば何ら恐れることはない程度だ。明後日の授業までに終えてくるように。わからないところはその時説明しよう」
 まるでいい教師っぷりで、その日の授業は終えた。‥‥普通すぎるくらいに。
 女子高生の話しかけを軽くあしらいつつ、教室を出て行く。HRでは炸裂してくれたプリンス・デマンドだが、うさぎに向かって特に何かはしなかっ‥‥あ、ウインク。
 背後から物凄い殺気を感じ、戦い前夜のごとき緊張を覚えるうさぎ。嵐の予感を感じていた。

 何ということであろうか。教師として十番高校に降臨したプリンスは、完璧な、もうホントかんっぷぇきな、教師っぷりを披露していた。
 若い女生徒たちからの人気はもちろんのこと、年頃の反抗し放題の筈の男子生徒たちまで手なずけてしまった。
「イマドキいねーぜ、あんな話わかるセンコーはよ‥‥」
 と、遠く空を眺め呟くヤンキーがいれば。
「ぼっ、ボク、今まで勉強以外のこと知らなくてっ‥‥で、でも、デマンド先生はそれ以外の世界も教えて下さったんですっ!」
 と、ビン底眼鏡の気弱な少年が思いつめたように叫ぶ。
 他にも、
「デマンド先生のおかげで告れました」
「デマンド先生のおかげでテストも乗り越えられました」
「デマンド先生のおかげでカタギの世界に戻れました」
 と謎の告白をする連中も続発した。
 中には深く聞いてみたくなる発言も混じるが、つまりは昨今の教師にはない、深く生徒と関わろうとする姿勢があるということだ。
 それは平成の金八先生といえるものだった。
「うさぎちゃん‥‥アイツ何しに来たのかしら?」
 聞かれても、そんなものは分からない。奴がどういうルートを辿って日本に輪廻転生したのかも。どうやって教員免許を取ったのかも。あの容姿で本当に日本国籍が取れたのかも。なーんもかも、理解の範囲外だ。
「わ、わかんないよぉ‥‥」
 ぼそぼそと先生の目を盗み、しゃべっていたうさぎ達だが、高速でチョークが飛んできた。
「きゃっ!」
 避ける余裕はなかった。が。
「‥‥いっ(てぇ/たい/たいです)!」
 ‥‥どういった物理法則か、うさぎ達女子に当たるかと思ったチョークは寸でのところで外れ、男子アイドル三人組に当たった。
 気がつけば星野が、夜天が、大気が、デコを押さえて呻いている。
「「「‥‥あれ?(星野/夜天くん/大気さん)?」」」
 避けたつもりはない。なのに何ゆえ目をつぶっただけでチョークは自分に当たらなかったのか。わけがわからない現象だ。
「え、何で? 星野ってばあたしの後ろの席だよね? え?」
 教壇のデマンドは一歩も動いてはいない。うさぎに向かって一直線に投げられたチョーク。うさぎを貫通して当たったとしか思えなかった。
「終礼中のおしゃべりは厳禁だ。よって、君達おしゃべり雀たちにペナルティを課す。終礼後職員室に来なさい。明日配布のプリント類を印刷してもらう」
「‥‥‥‥‥‥」
 だから。アンタ一体誰なのさ。

 

 



◎あとがき◎

 謎なティーチャー、ブラボー・デマンド。
 フルネームは何ですか!? 国籍はどこですか!? 大学出たんスか!? 教師を志したのはT・TU・デ・ス・カ‥‥!?
 書いた私も突っ込んでみたい。
 ところで。
 ごめんなさい、書き終えた後掲示板などで皆さんの「クールで素敵」発言を読んで、首吊りたくなりました。そういうイメージだったんだ‥‥!(汗
 私の中ではあくまでお笑いキャラだったようです。書いてみて初めてわかった。
 デマンドに詫びさせます‥‥。
『いや、すまなかったあゆあゆ。所詮は凡夫には重荷だったのだ。許してやってくれとは言わんが、せめて指をさして『バーカ』と罵るだけにしてやってくれ。
 その後は‥‥フ、オレが君に付き合うとしよう。‥‥ああ、どこにでも。我が姫?』

 

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素晴らしい!!!!!!!!デマンド様があああああ!!!!!!!!いつもながら本庄さん流石のノリのよさです!!デマンド様に惚れるんですけど!!デマンド様のクール・ビューティーさ、ゴーイング・マイウェイさ、素敵すぎます!ああデマンド様・・・・v<あれっ ここ星うさサイトじゃなかったっけ?(笑)
しかしデマンド様意外に金八先生バリに良い先生です(笑)そして何故か日本史!(笑)
私としてはうさに是非個人レッスンをつけてほしいんですけど・・(悶々)手とり足とり腰とりムフ☆ 
ああなんて美味しいシチュエーション!!時間ができたらデマンド教師VERも描いてみたいです(萌)
ああデマンド様に連れ去って欲しい・・・!!!
本庄さん素敵なデマンド先生(笑)、ありがとうございました!!!!

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