〜Winter song〜
「う〜寒い・・・」
もぞもぞ、とベッドの中で身動きをしてみるがなかなか起きあがる決心がつかない。
11月も半ばとなると朝晩の気温は著しく低い。ただでさえ朝が得意ではないうさぎにとって、温かい布団から抜け出るのは至難の業である。
事実、目を覚ましてから30分は激しい葛藤を繰り返しつつも、未だにこの心地よい世界から抜け出すことができない。
ジリリリリリ・・・
「う―――・・・・」
先ほどから5分おきに鳴る目覚ましを恨めしそうに睨んでから勢いよく上半身を起こす。
常ならばうさぎを起こすのが日課なはずのルナは、足下に潜り込んで未だに惰眠を貪っている。
それもそのはず、月をモチーフをしたデザインの可愛らしい目覚まし時計は午前5時半―――大変彼女に似つかわしくない時間を示していた。
何故学校も休みの土曜日のこんな時間に起きなければならないのか。それは、星野との約束があるからである。
今をときめくアイドルグループ、スリーライツのメインボーカル、星野光。
そのアイドルという特権で、スポンサーである某大手航空会社から贈られた、スキーリゾートのチケットがあるからどうか、と旅行に誘われたのだが・・・。
「ほら君たち仕事で修学旅行行けなかったじゃない? 学校のお友達と一緒に行って来たらどうかしら。勿論スキー場も貸し切りにしてあるから思う存分楽しんでらっしゃい。」
事務所の女社長の言葉に、白羽の矢が立ったのが当然と言えば当然、月野うさぎだ。(誰が名前を挙げたのかは言わずもがな、であるが)
そしてうさぎが旅行と聞けば当然他の4人―――美奈子、亜美、レイ、まことも例外ではない。自称プリンセスを守るため・・・そしてあわよくばスリーライツと少しでもお近づきになるため、である。
「自分で言うのもなんだけど、あたしがこんな時間に起きるなんて1年に1回あるかないかよね・・・」
誰に聞かせるでもなくそう呟くと、大きく伸びをしてから身支度をすべく立ち上がる。
まだ結わえていない、長い金色の髪が肩からさらりと滑り落ちた。
顔を洗って歯を磨いて、髪を結ぼうとしてふと小さな疑問が浮かぶ。
「・・・あたしが髪をおだんごにしなかったらなんて呼ぶんだろう」
月野うさぎのトレードマークであるお団子頭はそのままニックネームにもなっていた。
星野光も天王はるかも、そして今は遠いアメリカのマサチューセッツ州にいる恋人、地場衛も。
「今でこそ“うさこ”、って呼ぶけど最初はあたしのこと“おだんごアタマ”って呼んでたんだよね」
「・・・声、聞きたいな・・・」
未だに衛からは連絡がない。泣きたいような切ない気持ちで小さく笑って目を閉じて。そして声を思い浮かべる。
少し低い、その声・・・
―――よ、おだんご
「やだ!あたし今誰の声を思い浮かべた!?」
脳裏に響いたのは星野の声。衛のいない間ずっと側にいてくれる、今ではかけがえのない存在になりつつある星野。
慌てて目を開け、頭を振り払うと今度は冷たい水で顔を洗う。
最近ずっと揺れ動いている気持ち、それをもう一人の自分に指摘されたようで一人焦燥感を抱く。
「きっと最近ずっと一緒にいるせいよ!」
思わず口をついて出た言葉だが、気が動転していたうさぎにはそれが何を表しているか理解できていなかった。
「って大変!もうこんな時間!」
時計が指しているのは6時。待ち合わせは6時。
ということは・・・
「また朝からマラソン〜〜」
相変らず幸せそうにまどろんでいるルナを横目に、うさぎは手早く服を着ると勢いよく部屋を飛び出した。
***
「ったく何やってるんだよ・・おだんご・・・」
朝靄も晴れぬ初冬の早朝、人気のいない公園で星野光は一人佇んでいた。―――否、月野うさぎを待っていた。
もの言いたげな大気と夜天を尻目に、自分からうさぎを空港まで連れて行く役目を買って出たのだが、待てど暮らせど一向にうさぎは現れない。
「まさかとは思うけどまだ寝てたりしないよなあ」
と、口に出してみて思いっきりあり得えるという事実に気が付く。
「・・・そうだおだんごだしな・・・。やっぱり家まで行った方が良かったかな」
只今午前6時30分。家族と住んでいるので電話もできない時間だ。
携帯電話はといえば、テストの成績が良かったら帰って貰えるという約束を家族としていたようだが、彼女の普段の成績を見る限り残念ながらその日が来ることは望み薄であることは明確だ。
もう一度腕時計に目を落とし、少し・・・いや、かなり心配になったところで家の前まで行ってみようと足を向けたその時、白いコートを纏った一人の少女が公園の入り口より姿を現した。
「遅い!まったくこの星野サマを待たせるなんておだんごぐらい・・・」
「ごめん!星野このとーりっ」
息を弾ませつつ手を合わせて謝るうさぎに、星野は何か違和感を抱いて、まじまじと見つめる。
「へっへーん!今日のあたしはいつもと違いまーす」
コートのフードについているファーをなびかせ、何故か胸をはるうさぎに星野はあっと指を指して叫んだ。
「おだんご!どうしたんだよそのアタマ!」
その台詞にしてやったり、とにやにや笑ってうさぎは言葉を返す。
「あたし今日“おだんご”じゃないもんねー!」
えっへん。
「オマエなあ・・・」
ガキじゃないんだから・・・。
脱力しつつも嬉しそうなうさぎを見ているうちに、いつもと違うその姿に少しどぎまぎしてくる。
ふわふわと揺れるロングヘアーのうさぎは「元気」をイメージさせる普段の姿よりもずっと女の子らしい。
実際、可愛いよなあ・・・。
金色のふわふわの髪の毛にくるくるとよく表情を変える大きな目。寒さで少し上気した頬。ふっくらとした桜色の唇。
自分の事には鈍感なうさぎは気づいていないみたいだが、学校ではかなり人気があるのも事実。
・・・まあ、この俺がいるかぎり他の男なんかに渡さないけどな。
「星野?どうしたの?」
不思議そうに覗き込まれ、はっとする星野。
「え、いや何でも。じゃあいくか、“うさぎ”。」
「ちょっ・・・だからって呼び捨てって何よー!」
「はいはい」
照れ隠しに軽口を叩きつつも星野は口の端があがってしまうのを押さえるのができなかった。
一方、うさぎの方も名前を呼ばれ、心臓の鼓動が早くなったのを感じていた。
・・・・やっぱり髪を結んできた方が良かったかも。
自分が招いたこととはいえ、気になっている星野に名前を呼ばれるのは心臓に悪すぎる。
そうは思いつつも、反対に高揚していく心を抑えることはできない。
顔が赤くなっているのが自分でもわかったが、寒さのせいでバレていないのがせめてもの救いだ。
「うわ、息が白いよ」
はーっと息を吐き出してみると驚くほどはっきりと見える。
それもそのはず、公園の柵には霜が降りているほど、今朝は一段と寒い。
「で、大気さんと夜天くんは?」
「先に行くってさ。今頃他の四人も合流してると思う。今日はおだんごアタマじゃないうさぎと違って寝坊はしないだろうしな」
「・・・・・もう“おだんご”でいいよ」
からかうような口調にうさぎはじと、と横目で応える。
「・・・あたし朝苦手だもん」
―――敵と戦うのと同じぐらい。
不謹慎な事を心の中で付け足しながら頬をふくらませる。
「夜天も朝苦手なんだけどな、アイツ低血圧だし。ったくしょうがねえなあ、今度から俺が起こしてやろうか」
にやりと笑って顔を覗き込む星野に、どきまぎして視線をそらしつつうさぎは答えた。
いきなり整った顔立ちがアップになるのは心臓に宜しくない。ましてやそれが星野なのだから尚更だ。
「どうやってよ!言っとくけどモーニングコールなんて言わないでしょうね」
「今度おだんごに特製目覚ましやるよ。特別にこの俺の声を入れた目覚ましですがすがしい朝を迎えられるんだぜ」
「えーいらないー」
あっさり否定されて星野はムキになって反論する。
「うっわーオマエこの星野サマの目覚まし時計だぞ!?もしあったら何千万何百万のファンが欲しがる目覚まし時計だぞ!?」
日本が誇るトップスターの言葉もうさぎにはてんで通用しない。そんなところも星野はうさぎに惹かれる理由の一つなのだが。
「あたしにはまもちゃんから貰った目覚ましがあるもーん」
冗談で始めた会話だったが、その言葉を聞いた瞬間、星野は本気で新しい時計をプレゼントしようと心に誓った。
ふとうさぎを見ると、笑ってはいるが、その瞳は少し陰りを帯びている。星野は何か言葉をかけるべきか迷っていたが、うさぎの方が星野よりも早く口を開いた。
「・・・でも星野の歌が入ってる目覚ましだったらいいな」
柔らかく微笑んで振り仰ぐうさぎに、たまらず星野はうさぎを抱きしめた。
何とも形容しがたい、胸を締め付けるような愛しく切なく、やるせない想い。「ファイター」としての自分とは違う、「星野」としての想い。
「・・・っ 星野!?」
「なあ・・・俺じゃ、駄目か・・・?」
優しく耳元で囁かれ、うさぎは目を見開いた。あのときと同じ質問。雨の降りしきる中、肩を抱いて囁かれた、あの質問。
胸の鼓動が先ほどとは比べものにならないくらい、早くなる。
あのときも本当はずっと思ってた。この振動が星野に伝わりませんように。どうか、あたしの気持ちが伝わりませんように。
でもあれから時が経って。どんどんあたしの中で星野の存在が大きくなっていく。
「・・・わからないよ。・・・あたし、自分の気持ちがわからないの」
やっとの思いでそう言葉を紡ぎ出す。自分の感情を理解できるほど、あたしは大人じゃないよ。
「あたし、確かに星野に惹かれてる。その想いは日に日に強くなっていってる。けど、あたしは未来を知っているから。ちびうさを知っているから。」
そう、
あたしは自分の気持ちを知るのが怖かった。気が付くとまもちゃんの事を考えている時間よりも、星野の事を考えている時間の方が多くなっていって。
まもちゃんがいなくなってから、いつも側にいてくれて守ってくれている星野に本当は凄く惹かれている。
「でも、これだけは言える。あたし、星野が凄く大切だよ・・・」
星野は何も言わず微笑むと額に口づける。
うさぎが自分に惹かれている、その事実を知って星野は胸に温かいものが広がるのを感じた。
星野だって本気で答えを求めているわけではない。うさぎの立場を理解しているつもりだ。無敵のセーラームーンにして、全ての人々を柔らかく包み込むような月のプリンセス、いずれはこの世界・・・いや、銀河を統べる未来のクイーンになるはずの少女。実際には会ったことはないが、未来のネオ・シルバーミレニアムのクイーンには娘もいるという。
定められた未来。課せられた使命。
まるで見えない、重い鎖に絡め取られたようにいくつもの運命を担っている少女。
―――こんなに細い肩にどれぐらいの重圧がかかっているのか。
叶うことならば少しでも重さを取り除いてあげられますように。
「今はその言葉で十分だよ・・・おだんご」
抱きしめる腕に力がこもる。
願わくば、君をまもる力となれますように・・・。
雪が、舞い降りてきた。
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最近星うさ勢力が弱まっているそうなので(そうなのかしら!汗)畑違いのSSに手を出してみました。。
文章を書くのは得意ではないのですみませんが勘弁して下さい(泣)取りあえずスケープゴートになってみたんですが・・・(それすらもなれるかどうか疑問ですが 爆)
誰か・・・星うさ小説・・・お願いします・・・読みたいです・・・(笑)<飢えてます(爆)
ホントはほのぼのラブとか書きたかったんですが最後なんだか予想外にシリアスになってしまって(汗)<ここら辺がやはり畑違いップリ、、
今回の冬コミはイギリスにいて出れないので、漫画の代わりに書いてみたのですが。。。
どうしましょうなんだか続きそうデス(爆)
というかホントは「みんなで修学旅行もどきだよ全員集合!」「ポロリあり!?(何)ドキッ☆セーラー戦士だらけのスキー大会!」みたいなのを書く予定だったんですが(っていうか実際ちょっと書いてたんですが)あんまりにも長くなってきたんでキリの良いところで取りあえず終わらせてみました。。
続くかどうかは神のみぞ知る・・・(笑)<一発屋?(笑)
というかもし続くとしたら今度はもっと軽いノリで行きたいものだナア(古語)
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